19世紀・英国のプラントハンター、ロバート・フォーチュンは、幕末に日本にやって来て、日本人の園芸好きを賞賛しています。彼によれば、「日本の庶民の文化レベルの高さは、その花好きが物語っている。それは英国の庶民より勝っている。」と。フォーチュンが目にした植物の中でも特に絶賛したのは、日本の愛好家が愛でた、斑(ふ)入り、葉変わりなど異形の奇品でした。この中に万年青が含まれています。
江戸時代の万年青の姿は、浮世絵にも見つける事ができます。当時万年青は、非常に高価な品であったため、落語の長屋のような場面では見つけることは出来ません。
一方、大名や幕府の旗本の好事家たちの愛した園芸であった万年青を図版として残したサムライがいました。
五百石の旗本・水野忠暁(みずのただとし、みずのただあき)です。子どもの頃より植物が大好き。長じて後はプロの園芸職人の指南をする程の知識を持っていたそうです。
奇品を愛好し、特に万年青が大好きでした。自ら万年青を含む3,000種類の奇品植物を収集し、鉢植えで栽培、繁殖させました。
庶民から大名、旗本まで、趣味人を多く輩出した江戸時代は、まさに文化の華満開のカルチャーエイジ。万年青にとっても大躍進の時代でした。
ご紹介した浮世絵や水野忠暁が描かせた図にある「白と藍色」の鉢が瑠璃鉢です。
そのモダンな意匠は、まさに江戸デザインの粋です。
長らく途絶えていた瑠璃鉢ですが、つい最近、江戸文化の継承プロデュースを得て復活いたしました。
所は九州・有田。有田焼の窯元・李壮窯さんが、かたちと色出しに苦心を重ね、見事なリ・プロダクトを行ないました。